大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)116号 判決

事実及び理由

一  原告の請求原因及び主張の一ないし三は、当事者間に争いがない。

そこで、本件審決にこれを取消すべき違法の点があるかどうかについて考える。

二  本件審決は、第一引用例(成立について争いのない甲第四号証)につき、第一引用例の「装置において摺動杆とレバー並びにその連結手段の代りに可撓性索条及び滑車を用いることができる旨示されている。(同明細書第四欄二九行ないし三二行参照)」とするが、甲第四号証中の審決引用個所を調べてみると、その趣旨は、原告指摘のとおり、多数のプーリーに一本の可撓性リボンを掛け渡した構成からなる従来の装置では、計算結果目盛が非常に長くなる欠点があり、第一引用例のものは右の欠点を除去し装置をコンパクトにする重要な特徴をもつものであることを示しているものであると認められる。

しかして、審決は、右のような誤解に基づき、第一引用例「記載のものにおいて、摺動杆とレバー並びにその連結手段の代りに索条及び滑車を用いることができるというのは摺動杆とレバーの一部を索条にし、レバーの動支点を動滑車に代えたのに相当するから、両者はレンズ絞り調節機構とシヤツター速度調節機構にそれぞれ附設された部材の調節変化を、それに連結した索条を介して動滑車の変位となし、その変位によつてライトバリユーを取出すようにした構成で一致しており、」として、第一引用例と本件考案の一致点を認定し、また両者の差異点として、本件考案ではライトバリユーの取出し手段として、動滑車を一端に有する索条を、緊張状態において巻取る方向にスプリングの働くように連結した牽引ドラムの回転位相を利用するように構成されているのに対し、第一引用例記載のものでは「動滑車に連結した索条である点」にあると認定しているが、そもそも第一引用例には動滑車もなく、またそれに連結された索条もないのであるから、右の点を本件考案と第一引用例との差異として取出すのは前提において誤つており、また、第一引用例が欠点あるものとして排斥している従前の技術を本件考案と一致するところがあるものとして取出すこともできないはずのものであるから、結局のところ、審決は、第一引用例と本件考案とを比較するといいながら、実際には両者を比較していることにはならず、比較すべからざるものを比較しているといわざるを得ない。そうすると、本件考案は第一引用例及び第二引用例から、当業者が容易に推考できるとした点で、本件審決は、違法たるを免れない。

三  被告は、本件審決の、前記誤解に基づく第一引用例と本件考案との比較については特に言及せず、第一引用例のレバー及び連結部がそれぞれ本件考案における索条及び動滑車に相当するから、第一引用例と本件考案は機構的に共通し、それゆえ審決が両者は構成上一致した点があるとしたことに特に誤りはないと主張する。

しかしながら、第一引用例のレバー及び連結部がそれぞれ本件考案における索条及び動滑車に相当し、第一引用例と本件考案はそのゆえに機能的には共通する点があるとしても、両者はその構成を異にしていることは明らかであるから被告の主張は理由がない。

四  審決は、本件考案と第一引用例との相違点(1)につき、レンズ絞り調節機構とシヤツター速度調節機構との各調節変化を回動部材により取出すことは露出計連動形式のカメラにおいて常用技術であるから、第一引用例における摺動部材を本件考案のような綱車とすることは常用技術の単なる転用であるという。しかし、レンズ絞り調節機構とシヤツター速度調節機構との各調節変化を回動部材により取出すことが露出計連動形式のカメラにおいて常用技術であるとしても、そのことから本件考案のように綱車(3)、(4)、索条(2)、動滑車(1)、索条(5)、牽引ドラム(7)を連動させて露光量を取出すことが右認定の常用技術の単なる転用であるとは到底いうことはできない。第一引用例における直線状の摺動杆及びレバーにより露光量を取出す装置を、回動部材により取出す装置に代えたところで、そのことから直ちに本件考案において認められるように、シヤツター速度調節操作機構及びレンズ絞り調節操作機構を特別に広いスペースを必要とすることなく組込むことができるかどうかは第一引用例の記載から直ちに判明することではないと認められる。

五  被告は、審決認定の第一引用例と本件考案との相違点(2)(ただし、審決は第一引用例と本件考案とを比較しているように見えながら、実はその両者を比較しているのではないことは前説明のとおりである。)につき、本件考案は、第一引用例における露出量の直線移動取出し構成に代えて、第二引用例における露光量を回転体の回転位相によつて取出し指示する機構に転用したにすぎないと主張するが、第一引用例のものを回転体の回転によつて露光量を取出す機構に代えたところで、そのことから直ちに本件考案と同様な作用効果をもつものが得られるといえないものであることは前項で説明したとおりである。被告の主張は理由がない。

六  以上のとおり、本件審決は第一引用例の記載内容を誤解し、その誤解に基づいたうえで、本件考案と第一引用例及び第二引用例とを比較し、本件考案の効果も右引用例から予測できる範囲を出ないものとしたものであつて、その認定に誤りがあり、かつ結局は本件考案を第一、第二引用例から容易に推考できるとした理由が誤りとなるものであるから、違法である。

よつて本件審決を取消す。

〔編註その一〕本願考案の要旨は左のとおりである。

動滑車(1)に掛けられた一本の索条(2)の一端を、シヤツター速度調節操作機構に附設した綱車(3)に連結し、他端をレンズ絞り調節操作機構に附設した綱車(4)に連結し、シヤツター速度及びレンズ絞りの調節変化によるライトバリユー値の変化が動滑車(1)の変位によつて取出し得るようにした機構に於いて、前記動滑車(1)から別の索条(5)を引き出し、該索条(5)は、その他端をこれを巻取る方向にスプリング(6)の働く牽引ドラム(7)に連結し、このスプリング(6)の張力によつて索条(5)及び(2)を常に緊張状態に置き、以つて牽引ドラム(7)の回転位相によつてライトバリユー値を取出し得るようにして成るライトバリユー値取出装置の構造

〔編註その二〕本件に関する図面は左のとおりである。

本件明細書添付図面

<省略>

第一引用例第一図

<省略>

第二引用例第二図

<省略>

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